オクターブと8つの密度(2/2)
オクターブと8つの密度(2/2)
(前回からの続き)
霧雨魔理沙
「あ、『愛』……?」
博麗霊夢
「そう、四次密度は愛と共感の密度。……まだ私たちは経験してないから想像しがたいかもしれないけど。
四次密度は、自分への、それか他人への愛情と共感が満ち溢れた状態。だから人の心の中に、あるいは人と人との間に、不調和というものがもう存在しない。
それから、三次密度以下のような物質の支配する状態から抜け出ていて、三次密度の私たちからは、基本目に見えない。でも物質ではないからと言って、薄い影のような存在になるのではないわ。
むしろ三次密度より、もっと生命力に満ちた世界になる。だって、宇宙の本質は霊なのだから……物質のほうが、よほど希薄な存在なのよ。
そして、物質よりも思念の影響が強い世界だから、お互いに何を考えているか、お互いの魂がどのくらいの位置に達しているか、それが簡単に分かってしまうそうよ。
どれだけ外面を取り繕っても、何の意味もないってことね」
霧雨魔理沙
「ええ~~~~!? 相手の考えてることが分かる?
それ、なんかきついぜ……!」
博麗霊夢
「あんたにはきついでしょうね(笑)。まぁ今の私にだってきついわ。
でも、四次密度の人々は、私たちからすれば聖人と思えるレベルで愛情を豊富に持っている。
他人に害意を抱くことなんてないから、お互いの心が見えても問題ないんじゃないかしら。そこまで他人に愛情を持つなんて、難しいと思えるわよね?
でも四次密度にまでいたれば、そうじゃない。むしろそれが当たり前なのよ。なぜって? だって、私たちも、誰でも、この宇宙の存在はぜんぶ創造主の一部なんだから。
自分と他人、その区別はいろいろな体験をするために、便宜的に設けているだけ。本当は自分も他人も同じもの。すべては同じもの。
だとしたら、どう? 魔理沙、あんただって転んでひざを怪我したら、そこをかばうでしょう? それと同じ事。この宇宙がぜんぶ一つの存在だという事が分かり、魂の底まで理解することができた時、
ありとあらゆる『他人』は、もう自分の体の一部にしか思えなくなるわ。必然的に、ありとあらゆる他人に対して、愛情を持てるようになる――ということね。
中々、人間がそこまで思い切るのは難しいでしょう。難しくなかったら、とっくに私たちは四次密度の存在になっているものね。
けれど、いずれ私たちも、必ずその領域に達する時がくる。明日という人もいるかもしれないし、何万年後という人もいるかもしれない。
でも、それは時間の問題なのよ。いやしくも創造主の一部たる私たちが、進歩を止めてしまうことはないの。
『とても自分はそんな風になれない』なんて、不安に思う必要はないわ。どんと構えていたらいいんだわ」
霧雨魔理沙
「おう!」
博麗霊夢
「さて、既に私たちの理解を超えてる四次密度だけど、まだまだこれで終わりじゃないわ。
四次密度はだいたい3千万年続いて、そのあいだ、叡智と光を目指して絶えず努力が行われるの。それを十分身に着けた時、五次密度へと進むのだそうよ」
霧雨魔理沙
「今度は五次だって!?」
博麗霊夢
「五次密度は、光と叡智の密度。そこに到達した存在は、極限にまで賢くなっているわ。ありとあらゆる意味で、他人との闘争や戦闘行動を全て避けるだけの知恵を備えている。
それから物質の影響がますます希薄になって、むしろ思念で物質を操ることができるようになるわ。
だから五次密度の存在は、自分の体の形を、自分の意思で自由自在にコントロールできるのだとか。
五次密度存在の本来の姿は、もはや形を失っていて、白い光そのものになっているらしいんだけど。でも、望めば私たちのような人間そっくりの体になることもできるんですって」
霧雨魔理沙
「ええ~~~!? なんか面白そうだな! そうだな……
私だったら、いちど魔法少女に変身してみたいぜ!」
博麗霊夢
「あんたはすでにに魔女じゃない……」
博麗霊夢
「で、五次密度存在は、四次密度で学んだ愛と共感を、叡智に調和させることを学んでいくわ。それが十分な領域に達した時、六次密度の存在となる。
……六次密度は、愛と光、共感と叡智を統合させた密度。四次密度で学んだ愛と、五次密度で学んだ光を統合させる。
なんで統合なんかするのかって? そりゃ当たり前よ。だって創造主は、ありとあらゆる要素を包含し、統合した存在でしょ?
世の中には、とても賢いけど冷酷な人がいるわよね?
それから、とても優しいけどバカな人もいる。
そういう風に、愛と叡智、どちらかが少なすぎたらだめなの。両方のバランスを、いつかはとる必要があるのよ。
そして、その宇宙の重大な要素である愛と光を統合した六次密度の存在は、より創造主に近づいていくわ。
たとえば、中期の六次密度存在は、時間をさかのぼって、過去のすべての自分自身に対して援助と指導を行っているそうだわ。
……これは、いわゆる『ハイヤーセルフ』っていうものの正体だそうよ。ハイヤーセルフというのは、私たちの意識よりもっと深い所にある自分自身、というような意味。
そのハイヤーセルフは、遠い遠い未来の自分自身が、自分を助けにきてくれているもの――というわけね。そしていつか六次密度に達した時、自分自身がそのハイヤーセルフと合体して、同一の存在となるそうよ。すごい話よね。
それから、ラーの話によると、とある六次密度存在は、太陽と自分自身を融合させて、繁殖を行っているそうよ。
地球が受け取っている太陽の膨大な光……それは、六次密度存在からの地球の存在への、膨大な愛情表現というわけね。太陽と融合することで、その六次密度存在はこの太陽系の創造主のような地位まで上り詰めている――と言えるかもしれないわ」
霧雨魔理沙
「す、すげぇ……スケールがでかすぎて、もうおいつけねぇぜ」
博麗霊夢「次はもっとスケールがでかいわよ。六次密度存在が十分に愛と光のバランスを取った時、七次密度存在へと進化する。
七次密度は永遠の密度・ゲートウェイの密度。この密度で体験活動は完成し、七次密度存在は物質宇宙が生じる以前の――いえ、『前』という言い方が正しいかは分からないけど、ともかく、時間という概念を超越するわ。
過去も未来もなく、あるのは永遠の完全な現在だけ……別の言い方をすれば、過去も未来も同時に存在している状態へと戻るという事。
そして七次密度存在は、宇宙の全てとの一体性を取り戻すことになるそうよ」
霧雨魔理沙
「なるほど、わからんぜ……。でも完成っていう事は、七まできてやっと終わりなのか?」
博麗霊夢
「終わりではないわ。さらに上の密度、八次密度が存在するみたい……けどそれは、ちょっとほかの七つとは違うわね。
八次密度中に全宇宙は再び創造主の下に一つに戻る。そして再び宇宙が生まれ、次の体験――次のオクターブの一次密度が始まる。
次のオクターブは、今のオクターブの体験情報を総合して、また新しい体験が出来るよう、創られるそうよ」
霧雨魔理沙
「ん? オクターブ? それって、音楽の……」
博麗霊夢
「そう、そのオクターブ。ラーは、宇宙の体験を音階に例えていたわ。
一次~七次密度までがドレミファソラシの音符だとするならば、一つの宇宙はひとつの音程……オクターブに例えられるわね。
音符がシまで終わったら、オクターブが一つ上がって、またドから始まるでしょう? それと同じ事。
八次密度というのは、次のオクターブの一次密度を作り出すのだそうよ。……面白いわよね。
宇宙は、心臓が打つみたいに永遠に誕生と終結を繰り返して、そのたびに新しい体験の素材を産み出す。
創造主は、また新しい体験記録を知る。今の私たちの感覚で言えば果てしない話だけど……でも、ラーはこうも言っている。
一つの宇宙から次の宇宙まで、すべては無限の神秘の中で営まれている。だから、そこに時間的前後があるわけではないの。
過去も未来も本当は存在せず、完璧な現在が、永遠に存在し続けているだけだって」
霧雨魔理沙
「すげぇ……そんな事、今まで考えたことなかったな。壮大すぎてヤバイぜ!」
博麗霊夢
「そうね。でも、その宇宙を営んでいる創造主は、私たち自身でもある。私たち、全員の中に、創造主のすべての性質が完全な形で眠っている。
いつか、絶対に、私たちも再び創造主へと帰還する日が来るのよ。さ、それが分かったら、こんなくだらない話をしてないで、目の前の一日を一生懸命生きることね」
霧雨魔理沙
「いやいや、お前が話しはじめたんじゃねーか!! ならなんで話しはじめたんだよ!」
博麗霊夢
「もちろん、宇宙の『計画表』を知っておいて欲しかったからだわ。何も先のことが分からないで生きるよりは、いいでしょう?
ただ、一つだけ注意。この手の『スピリチュアル情報』は巷に色々あるけれど、別にそれを知ったからと言って、単にそれだけでは、あんたの魂は少しも向上するわけじゃないの。
そんなものにかじりついて高尚な気分に浸っているだけというなら、そんなものはむしろ忘れた方がマシだわ。
知識は力よ。そして力を授かった者は、それを善い事のために活用する責任を負う。……だから、自分が創造主の一部にふさわしい人間であることを、頭の中で考えるだけじゃなく、実際の行動で示していきなさい。
イヤイヤじゃなく、自分の意思で。……私が言いたかったのは、それだけ」
霧雨魔理沙
「あ~~~~っ! もう、どこが『それだけ』なんだ、じゅうぶん長話だぜ!
そろそろお腹が痛いんだ、厠させろー!」