死後の世界
死後の世界
結月ゆかり
「突然ですが、死後の世界を垣間見てみましょう」
弦巻マキ
「なに突然!? ゆかりん、い、いったい私に何するつもりなの!」
結月ゆかり
「安心してください、マキさんを殺そうというわけじゃありません」
弦巻マキ
「ほっ……」
結月ゆかり
「というか逆です。私たちがあっちに行くのではないんです。霊の方から、私たちに語り掛けてもらうのです。
……正確には、語り掛けてきた記録、ですね。マキさんは、この世に霊が下りてきて、話しかけてきてくれる『交霊』という現象をご存じですか?」
弦巻マキ
「んー? テレビとかで見たことはあるなぁ。こう、女の人が寝てるんだけど、口だけ動いてしゃべってたやつ。
不気味だったなぁ」
結月ゆかり
「そうですか。日本ではそうした番組で、芸人紛いの方が面白おかしく、おどろおどろしく、あるいは注目をひくためだけに演出していることが多々です。
なので、『交霊』など単なる子供だましの大嘘と考えている方も多いでしょう。
よしんば本物の霊だったとして、それを確かめるすべもありません。人によって……というか、霊によって言うこともバラバラだったりします。
特に、人間界は低級霊の住む世界にほど近いですから、近づいてくる幽霊もそういうどうしようもない霊であることも多いんですよね。そういう場合は、交霊と称してとんでもない大嘘を吹き込まれてしまうことにもなります。だから、交霊は信用されないんです。
……でも、一概に切り捨ててしまうのはもったいないでしょう。世の中には、真の高級霊が交霊を通じて話してくれた、掛け値ない真理もたくさん届けられているんですよ。
死者と一口に言っても――人間の本質は霊ですから、ほんとは『死』ぬことはないわけですが――いろいろですからね。真実を教えてくれるものの声を聞けば、現世では分からないことが分かります。たとえば……死は誰にでも訪れる当たり前のことで、まったく恐ろしくはないという事。それどころか、まっとうな人生を送った方であれば、死とは素晴らしい霊界へ誕生することだという事――です。
どうですか。けっこう大変なことじゃないですか? ほとんどの人間が、毎日、死におびえて暮らしてますのに。でも、もう怖がらなくて済むんです。色々な真理を届けてくれるのが、交霊というものです。
ですから、この分野に真面目に取り組んでいる霊媒の方が、あるいは霊媒でなくてもそれに協力する方が、欧米を中心に世界中に数多くいらっしゃいます。それは、地上の人たちに少しでも多く真実を知ってもらいたいとの、霊界の方々の真摯な想いからだそうです。とてもありがたいですよね。
こうした運動は『スピリチュアリズム』と呼ばれたりしますね。実は、マキさん、19世紀ごろから、霊界側から一斉に、計画的に、かつてないほど大規模で、人類への交信が始まったんですよ」
弦巻マキ
「い、一斉に? へー、なんかすごそう……!
」
結月ゆかり
「それもひとえに、霊界の方々から人間に対する愛情あってのことです。今は、かつてないほど真理を知る機会に恵まれた、いわば大交霊時代というわけです」
弦巻マキ
「えーそうなのー!?」
結月ゆかり
「ただし注意があります。霊と言っても、霊にはいろいろいます。天使のような高級霊から、迷惑極まりない未熟霊まで……。交霊の際には、未熟霊が紛れ込んで大嘘をしゃべっていないとも限りません。
だから交信の内容をぜんぶ鵜呑みにするのは止めて下さい。理性と直観にしたがって、交信の内容をしっかり吟味してみるといいでしょう。
……ただ、誰が聞いても非常に質が高い、最高峰の霊界通信というのもいくつか存在します」
弦巻マキ
「へぇ〜〜! どんなのがあるの? 有名?」
結月ゆかり
「もっとも有名なのは『シルバーバーチの霊訓』という物です。内容の高尚さゆえ『ダイヤモンドの輝き』と評されているくらいです。
とはいえ元々人気があるわけでもないジャンルですから、本国のイギリスでは本は絶版になっていることが多いようですね。その点、むしろシルバーバーチは日本のほうが人気が高いみたいです。
このブログはアフィリエイトを載せませんのでリンクは張れませんが、amazonで検索したら2016年に新装版が出たばかりでした」
弦巻マキ
「メタい話をしないで……。でも、へ〜面白いね。なんで日本のほうが人気なんだろ? イギリスで出たものなんでしょ?」
結月ゆかり
「推測ですが、シルバーバーチ霊の語る内容が、日本人に合っていたのではないでしょうか。
語っている内容は、人々がお互いに優しくし合うべきという事や、輪廻転生の話題など、日本人にとって親しみやすい内容のような気がしますので……。ともかく、せっかくですからシルバーバーチのことをお話してみましょうか。
ちなみに原文は、スピリチュアリズムブックス様というサイトに無料で掲載されていますので、そちらを見た方がいいでしょう。http://www5e.biglobe.ne.jp/~spbook/index.htmです。」
弦巻マキ
「あのさ、ゆかりん、URLをぜんぶ口で言うのって疲れない……?」
結月ゆかり
「さて……シルバーバーチは霊の世界についてくわしく述べてくれています。
霊界には無数の領域がグラデーションのように重なっていて、死人の魂の発達程度にしたがって、いろいろな領域へ行くことになるようです。低い領域には、まだ未熟な魂が赴きます。高い領域には、発達した魂が行くことになります。
霊界からのメッセージに色々とバリエーションがあるのは、その霊によって行く領域が千差万別だからだそうです。
嘘を教えて喜んでいるおばかな霊もいれば、最高級の真理を惜しげもなく教えに来てくれる天使様のような霊もいる、というわけですね」
弦巻マキ
「ふ~ん。天国だとか地獄だとか、確かにそういうのよく聞くよね」
結月ゆかり
「そうですね。
でも、霊界が真っ二つに分かれているというわけではありません。魂の浄化のために苦痛が与えられる領域から、至福に満ちた領域まで、いろいろとあるというのが正解みたいです。
それから、多くの領域である共通点があります。これは、たぶんとても大事なことですよ」
弦巻マキ
「どんなこと?」
結月ゆかり
「霊界に物質はないということです。
物質は、現世で人が生きるための一時的な道具に過ぎません。ですから、当然、食べ物も、住居も、衣服も、欲しければ自分の思念の力だけで創り出すことができます。というか、そもそもそういったものはなくても、霊界では生きていけます。
霊は不滅で、生命の根源です。私達は、物質は実体で、思念は目に見えない影みたいなものと思いがちですけど……現世に限ってはそれも間違いではありませんけど、でも本当は違うんですよ。宇宙と生命の本質は霊です。
物質が影で、霊こそに実体があり、確からしいんです」
弦巻マキ
「へ〜?」
結月ゆかり
「あ、今聞き流しましたね? でも他人事ではないんですよ。マキさんだって、いつかは絶対に霊界に行くことになるんですから」
弦巻マキ
「そりゃそうだけど……まだまだ先の話じゃん」
結月ゆかり
「まだまだ先? ほんの100年もないじゃないですか。私達は、無限の時間を生き続ける創造主の一部、いえ創造主そのものなんですよ?
100年や200年なんて、ほんの瞬きにすら満たない時間だと思いますけど」
弦巻マキ
「そ、そう言われるとすぐな気がしてきた……!」
結月ゆかり
「ほんとに、他人事ではないんです。なにせ、人は絶対に死にますから。
霊界に行ってから、霊の事を何も知らないので困る人が大勢いるそうです。マキさんは、今から心の準備をしておいて下さいね」
*
弦巻マキ
「分かったよ〜。なんか、想像したらドキドキしてきたなぁ。
なんか変な事いうけど、寿命が終わるのがちょっと楽しみだよ~」
結月ゆかり
「ふふ、楽しみに思うのはけっこうです。でもマキさん、だからと言ってこの現世の生活をどうでもいいなんて、そんなこと思ってはいけませんよ? まして、自分から死期を早めるような真似も、ぜったいよしたほうがいいです。
この現世は、苦しみも多いですがその分進歩もものすごい勢いで加速されているんです。いわば魂の特訓場です。私たちは、自分から意を決してこの世界に生まれたんです。今は、目の前の人生にしっかりと向き合い、行動することが、何よりも大事です。
そして亡くなる時は、マキさん、ぜひ一緒に行きましょう。約束ですよ」
弦巻マキ
「わ~い、ゆかりんと一緒だー! 死んでも一緒だよ!」